六月十四日 曇のち雨 (31日目)

 昨夜は地平線の見えるところでテントを張ったため、その地平線すれすれのところまで星が観えた。360度見渡す限り、星、星、星ばかりです。こんな夜は初めてだ。それにしても昨夜は寒かった。テントの中でのシュラフでも寒かった。このまま凍え死んでしまうのではないかと思った。そこで、すかさず、かねて持っている、これ、これですよ。ウィスキーなのですね。うーむ、少し暖まったかなって感じですね。
 しかし、今日は天気が悪いな。雨でも降りそうな天気だな。風も強くなってきたな。それに何だ、この道は、まるでナラボー平原の延長ではないか。カンガルーは死んでいるし、回りは起伏のある高原てなもんで、もう、やんなっちゃうな。帰りてーぇ、日本に帰りてーぇ!何で、俺はバイクに乗って、こんなところを走ってんだろう。
 よっ!とうとう降って来た。あっ!そうだ、あそこの農家のガレージで一休みしよう。
「スミマセン、アメガヤムマデ、ガレージデ、ヤスマセテクダサイ」
と、言いながら、ちゃっかり暖炉の前でコーヒーをご馳走になってしまった。この一杯が生き返った。体がぬくんできたよ。いいね、暖炉の前でのコーヒーって、安らぎを感じる。今まで、こんな気持ちって初めてだ。本当に、大草原の小さな家のジェームスさん、ありがとう。
 雨のなか、再び出発。サスケも何か、今日は調子が悪そうだな。元気出せよ。俺もこうして頑張っているのだから。エアーズ・ロックを見るまでは。
 雨の中、今晩はテントを張るのも、どこかで野宿するのもかったるいな。昨夜のような寒さはこりごりだ。よし、今日は一丁贅沢をして、キャラバン・カーを使うか。なんと、十四ドル、Y・Hの約三倍、お金続くかな。うーーーーーーーーーん、よし、決めた。十四ドル払おう。
やはり、十四ドルの価値はあるな。ゆったりできる。再び生き返った気分だ。Y・Hより暖かい気分がする。あー、ここは天国だ。ちょっと大げさだったかな。

シドニーからの走行距離  5724キロ

   この辺りに来て、ちょっと弱気になってきた。
   日本語が通じないので、どうしても話し相手がほしくなってしまう。
   時には弱気もいいたくなるものである。
   私も人間ですからね。自然と人の親切に甘えてしまうものである。
   体が冷えきっている時の暖かいコーヒーは、非常においしかった。
   オーストラリア人の心の暖かさをも感じた。
   どんな人でも暖かく受け入れる優しさ、私は、この優しさを日本へ持ち帰ってきた。
かつて栄えていたカルガーディ
南十字星、撮影成功
キャラバンカーにて