六月十日  晴れ (27日目)

 ナラボー平野突入。まだまだ地平線は続く。時々、海岸の方へ寄り道。すげーや、すげー絶壁だ。ここから落ちたら完全に死ぬだろうな。百メートル以上は軽くあるだろうな。
 この道はどこへ行くんだ。あれれ、ちょっとやばい雰囲気だぞ。アボリジニの保護地区へ侵ってしまったようだ。貧しい生活をしているようだな。こりゃー、家というもんじゃないな。シートの四隅を木に縛ってあるというお粗末なもんだ。みんな俺を見ている。マフラーの壊れているオートバイを乗っているせいもあろうが、ちょっと彼らにとって私は迷惑のようだな。
 安らかな一時を邪魔してごめんなさい。

シドニーからの走行距離  4113キロ

   アボリジニとは、オーストラリアの先住民である.今は、保護地区で政府からの援助で
   生活している者がほとんどだ。
   その一方、狩猟生活をしている部族もいくつかあるそうだ。この日会ったアボリジニは
   両方のような気がした。自動車を乗っていたからだ。
   同じ地球人として、彼らと共に数日を過ごすことは、この広大なオーストラリアを、
   自然と一緒に生きるという意味では、貴重だったかもしれない。
六月十一日 晴れ (28日目)

 大きい、オーストラリアは大きい。しかし大きい。行けども行けども地平線は消えない。どこまでもどこまでも一本の道は続く。サスケよ、いったいこの道の終わりはどこなんだ。
 ナラボー平原というだけあって砂漠ではなかった。それだけは助かった。本当に何もない。
 何だ!カラスと鷹が道路脇で何かを食べているぞ。カンガルーではないか。あっちもあるぞ。まただ。何だこれは。きっと車に跳ねられたに違いない。このままの調子だと、ナラボー平原を越えるまでに
百以上は見るだろうな。
 しかし、まだナラボーの終わりには着かないのだろうか。
 おっと!今度は生きているカンガルーだぞ。正真正銘の野生のカンガルーだ!写真、写真、写真を撮るのだ。カシャッ!カシャッ!やっほー!ついに見たぞ、野生のカンガルー。跳ね回っている。
 よ、よ、どこへ逃げる。逃げなくともよいではないか。こっちへ来い。こっちのみーずはあーまいぞー。あーん、行っちゃった。十頭ぐらいの群れだったかな。見られないと思った野生のカンガルー、遂に見たぞ。最後まで見られないと思った。もう感激だ。なっ、サスケ、言うこと無いな。
 今晩はノースマンより八十キロ手前のレスト・エリアで一人寂しくキャンピング。音が全くなく、
ただ耳鳴りのキーンという音がしているだけ。不気味で寂しかった。

シドニーからの走行距離  4681キロ

   ナラボー平原を越えるのに三日かかった。日付変更線を二ヵ所通ってである。距離にして
   約千キロ弱はあるようだ。
   カンガルーは夜に車で跳ねられたようだ。ロード・トレインというトラックが夜は
   猛スピードで走り、そのライトで目が暗み、道路に出ていたカンガルーは立ち竦んだり、
   右往左往したり道路を横切って跳ねられてしまうらしい。
   オーストラリアの自動車の前に、よく、鉄パイプでフロント・ボディを保護しているのを
   見かける。これを、ルーバーといってカンガルーなどの動物を跳ねたときに自動車を守る
   ためだそうだ。
   それから、もしカンガルーを跳ねてしまった場合は、カンガルーの死骸を道路脇に避けて
   おくのがマナーだそうだ。
   しかし、いくらカンガルーが増えているとはいえ、こうもたくさんのカンガルーの死骸を
   見ると、いつかは絶滅してしまうのではないかと思ってしまう。

ナラホ゛ー平原突入
夜、オートバイでは走れないな
始めて見る野生のカンガルー