六月六日  曇り (23日目)

 ビーチ・ポートより海岸通りに約五十キロメートル先、ロベで野生のペリカンを見た。
奥深い森の中の小さな沼で、サギと一緒にペリカンが毛作りをしていた。静かで、ただ、鳥の鳴き声が聞こえるだけ。再びオートバイのエンジンをかけようものなら、
「こら!うるさいぞ!」と鳥たちに怒鳴られそうである。でも、あのペリカンなら
「静かにしてね。」と優しく言うだろうな。
 それから、長い長い湖らしきを左に見ながら、または、湿地帯にむりやり通したような道を通り、その途中で360度地平線というど真ん中をひたすら走りつづけた。そして、山を越えると雲の隙間からの太陽の光に照らされた街を見た。アデレードだ。
「サスケよ、あれがアデレードだ。」と一人オートバイに語りかけなかった。しかし、オートバイを止め、山上から、夕日が沈んでゆく街を眺めながら、「やっと着いた」と一人呟いた。

シドニーからの走行距離  2584キロ

   広大なオーストラリアを一人旅していると、鳥、花、木、自然が友達となる。
   私の小さいころのあだ名が、サルだった。それから、マンガのサスケ、真田十勇士の
   佐助が好きだ。自由奔放に自然の中を駆け巡る、そんなサスケが好きだ。
   サスケは、私がオーストラリア一周を達成できた唯一の功労者だ。
アデレードの夜景