七月二日 曇り  ( 46日目 ) 

 よかった、雨がやんでいる。でも、また降りそうな空模様だな。 
  オーストラリアという国は、街と街との間が何にもないときている。しょうもない国だ。走っていて、何も面白いことがない。眠くなるだけ。ただ、唯一楽しみといえば、無言のVサインをドライバーに送るだけ。
 カンガルーは相変わらず車の犠牲になって道脇で死んでいる。
 一体、この辺の人たちは何を楽しみに生きているのだろう。呆れて付き合ってられねーよ。        
 と、思いつつ、歌いながら、ひたすら走っている自分でした   
 途中、パースから来たという犬連れのオーストラリア人と会った。よし、俺も彼に負けずに頑張るぞ!
 ほら、日差しだ!太陽は雲に隠れて、見えないが、幾分青空が見える。  
 サスケ!あの青空に向かって走るんだ。

シドニーからの走行距離 8909キロ

   確かに、何も無い。風景を楽しむにも回りは地平線である。
   しかし、自分自身の存在は確実に感じ取れる。一日に数台の車と擦れ違う。    
   彼らもオーストラリアの大地の上に生きてるんだと、実感しているに違いない。
   今の私は、彼らの気持ちがわかる。    
   ところで、この日私はパトロールカーに止められたのである。スピード違反いや違う。   
   実は強盗に間違えられたのである。約百キロ手前のドライブ・インに強盗が入り
   オートバイで逃げたというのである。そこで私をここまで追ってきたという。   
   残念ながら私は違いました。これも一つの記念。
   ちゃっかりパトカーの前で、ポリス・マンとVサインの記念写真。    
   ここで笑ってしまったのである。   
   この警察官、ドロボーを追っている最中なのに
   「バイクモモッテコイ。イマノハ、ポリスノモジヲ、ワタシガカクシテシマッタ。モウイチマイ」  
   てなわけで、もう一枚記念写真。
   「カシャ!」  
七月三日 晴れ  ( 47日目 )

 いい、実にいい、晴れているという事は気持ちまでがすがすがしい。よし、今日一日頑張るぞ。         
 わ、わ、わー遂に、遂に越えました南回帰線。うむーうむー、ここが南回帰線か。あまりパっとしないな。記念写真を撮ろうとしたところへ、キャンピングカーでのオーストラリア人が来て、みんな一緒に
 「ハイ、チーズ」と。
 おっ!いたいた。レスト、エリアで休んでいる自転車野郎。彼とはパースで顔見知りであった。日本人である。先月の二十八日にパースを出発した。
 「おーい、元気そうだね。」
 「まぁなんとか。」  
 「今日は会えるのではないかと思って、ほらレモンサイダー買っておいたよ。それに、これ缶詰二つとっておきなよ」
 「どうもありがとう」   
 「一日何キロぐらい走るんだい。」 
 「まぁ平均百キロです。」
 「とにかく頑張れよ。それではいい旅を。」 
 「ありがとう、加藤さんも。」
 「サンキュー」   
 ああして自転車で頑張っている奴をみると、俺もっていう気がする。よし、頑張ろうサスケくん。   
 今日は、自転車野郎三人、内二人が日本人。おまけに一輪車野郎が一人いた。これには、驚き桃木である。世の中には変わった奴がいるもんだねとつくづく思ったよ。  

シドニーからの走行距離 9440キロ

   この辺から時計を必要としない生活である。       
   日の出と共に出発、そして、日没と共に夕食である。  
   風景は、二、三十センチの草がところどころに生えているだけ。土は、赤茶色だ。
   オーストラリア人はこういうところを、ブッシュと呼んでいる。
犯人を追っているのに、記念写真
風の力はすごい!
南回帰線